発酵のふるさと再発見 【後編】
「醤油」
▲中門前屋の外観
山崎町の西町地区は、江戸中期には酒造業で隆盛を極めた地域です。その中で、中門前屋は「門五醤油」という商標で戦前まで醤油作りを行っていました。築約170年の醤油蔵中門前屋は、2018年9月に景観形成重要建造物に指定され、2019年には町屋ホテルへと生まれ変わりました。形を変えながら宍粟の伝統が受け継がれていきます。
「漬物」
(左)宍粟三尺きゅうりのかす漬け (右)やたら漬け
<やたらおいしい やたら漬け>
やたら漬けは、標高約550mの高地にある千種町西河内で、「冬の保存食」として独自に発展した漬物です。
「野菜をやたら使って、やたらおいしい」を語源に、きゅうりやなす、みょうが、しその実など何種類もの野菜が約半年間かけて塩漬けされます。この素朴な味わいは各家庭で受け継がれてきた郷土食と言えます。
<ながーいおいしさ宍粟三尺きゅうりのかす漬け>
長さが通常の約3倍、60cmにもなる「宍粟三尺きゅうり」。消費者の嗜好の変化などにより、昭和40年代後半には市場から姿を消していましたが、地域色豊かな特産野菜を望む声により復活しました。
三尺きゅうりを宍粟の酒蔵の酒かすに漬け込むこと約1年。人気商品の「宍粟三尺きゅうりのかす漬け」が完成します。
蘇る発酵文化「藍染め」
▲藍染め製品 ①小銭入れ②コースター③バッグ
藍は、タデアイやインドアイなど青い染料が採れる植物の総称。これらの植物は青い色素の“もとになる成分”をもっていますが、そのままでは染料として使用できません。そこで必要なのが“発酵”です。藍の葉を発酵させることで、染料に有効な菌が活性化し、染色が可能になります。藍染めの原料となるタデアイのなかでも最高の評価をされる播州藍が宍粟市一宮町に自生していたことから、宍粟でも藍染めが盛んに行われていました。
<宍粟の伝統 播州山崎藍染め>
播州地域では古くから藍染めが行われ、特に山崎地区には江戸期から昭和初期まで紺屋(染め物屋)が多数ありました。しかし、インジコ藍(化学藍)の登場で天然素材による手間のかかる藍染めはすたれていき、宍粟の紺屋は次第に姿を消し、それとともに原料の播州藍の栽培も自然と消滅しました。
江戸時代初期、かつて播州地域の藩主だった蜂須賀家により阿波に伝わった播州藍と藍染め。播州地域では衰退した藍染めが、阿波では改良、保護されて現在まで伝承されてきました。一時途絶えた播州山崎藍染め織りですが、山崎町の藍染め織り職人、正木竣雄さんの母・国枝さんが本場徳島の研究家の指導を受けながら、ほぼ独習のかたちで復活。現在は兵庫県の伝統的工芸品に指定されています。
受け継がれる発酵文化「ゆずしそしょうゆ」
(左)こだわりのゆずしそしょうゆ (右)イベントブースで販売する高校生
<高校生が生み出す今までにない醤油>
調理を学ぶ県立山崎高校生活創造科の生徒と、たつの市の矢木醤油が共同開発した新調味料「ゆずしそしょうゆ」が2018年9月に商品化されました。
2017年に開かれたビジネスフェアで同校の活動展示を見た同社が、宍粟の特産品を使った新しい調味料の開発を山崎高等学校生活創造科に依頼。試行錯誤の末、宍粟市産のシソと姫路市安富町のユズ、同社の醤油を使ったさっぱり風味のだし醤油「ゆずしそしょうゆ」が誕生しました。
▼問合せ先 まち・にぎわい課
TEL 63-3127 FAX 63-1282